2018/02/18
こんにちは。
うさぎ専門店キャロットハウス店長のきゃろたまです。
「うさぎの繁殖力は強い」
このことは、すでにみなさん知っていることだと思います。
ですので、オス・メスそれぞれ1羽ずつ飼う場合は、個別のケージを用意し、お部屋で遊ばせるときも1羽ずつ遊ばせなくてはいけません。
しかし、うさぎ専門店を経営するなかで、「うちの子たちは大丈夫だから」とおっしゃる方、目を離した隙に鉢合わせになってしまい交尾するなど、予期せぬ出産で、キャロットハウスに相談される方がかなりいます。
この記事の目的は、もしも予期せぬ出産になってしまった場合に、わたしがお客様にお伝えしていることを書きました。
決して安易な出産を推奨する記事ではありません。
最近では飼い主さんの意識も高くなり、ペットの安易な繁殖はしないでおこうという考え方が広がっています。
しかし、逆に予期せぬ出産になった場合、インターネットで検索しても、適切な情報が出てこないこともあります。
予期せぬ出産にいたった場合に少しでも参考になればと思って書きました。
またこれからお伝えすることは、あくまでキャロットハウスでの事例ということで、さらに想定外の事態も起こりうること、イレギュラーな出産になった場合子うさぎの生存確率が非常に低くなること、どんなに手を尽くしても死亡する子うさぎもいることを心のどこかに留めていただければと思います。
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うさぎの妊娠期間は約31日
「気がついたら生まれていました!」という場合、約1か月前に原因行為がなかったか思い出してみてください。
ちなみにうさぎの交尾は早い時だと5秒間のうちに終わります。
はい、たったの5秒です。
交尾が終わるときにオスうさぎは、「ふぎゃーーーー」と奇声をあげて、転がります。
そして何度かうしろ足でダンダン音を鳴らします。
それからメスうさぎは出産後すぐに妊娠できる準備が整うため、いつまでもオス・メス一緒に遊ばせていると、翌月にまた出産してねずみ算式に増えていくことになります。
無事に出産すればいいのですが、経験上予定日から3日以上生まれてこない場合は、難産になることが予想されます。
難産になった場合、出産に時間がかかるだけでなく、出血の量が多くなることもありますし、お腹の中で赤ちゃんが育ちすぎて出てこない場合もあります。
キャロットハウスでは過去に1例だけ母体の骨盤に赤ちゃんの頭が挟まってしまい、帝王切開術を行ったことがあります。また、出産による予後不良、出血多量が原因で母体が死亡することも予想されます。
うさぎも人間も、出産は命がけなのです。
もしうっかり交尾しちゃったことに気がついた場合は、25日くらいに巣箱を設置する
予期せぬ出産の場合、ケージの中やハウスの中、部屋の中で遊ばせているときには布団の中などで生み落としてしまいます。
交尾したことに飼い主さんが気がついた場合、交尾後25日くらいに、巣箱を設置してあげてください。
キャロットハウスで巣箱として使っているのが100均で販売されている「四角形のプラスチック製ざる」です。
2つ用意して、ひとつの半分から3分の1を残して、カッター等で切り、結束バンドとガムテープでくっつけて作ります。
いろいろ巣箱を作って試してみたのですが、わたしの場合はこの方法に落ち着きました。
優れている点は、下がざるになっているのでおしっこで巣箱が汚れにくい点。
また、ブリーダーさんではブリキ製の巣箱を使っていらっしゃる方もかなり多いです。
巣箱を設置したあとに、中には「バミューダグラス」という牧草を入れます。
チモシーだと、通水性がよくなくておしっこで汚れやすいので、わたしはバミューダグラスを使っています。
ただし巣箱を設置してもお母さんうさぎがほかに居心地・生み心地の良いところがある場合、巣箱の中で出産してくれないこともありますし、思ったより難産で、巣箱の外に生み落としてしまうこともあります。
ケージ内で巣箱以外の場所で生み落とした場合は、巣箱に入れてあげてください。
ただし、ケージと巣箱の隙間にあえて巣をつくっている場合は、その場所で子育てするほうがいい場合もあります。
もし部屋の片隅で出産した場合
妊娠していることに気づかず、ある日こたつ布団の中や、隠れられるような部屋の隅で出産することもあります。この場合、母うさぎが「ココが生みやすい!」と判断しているのと、ちゃんと巣の位置を覚えているので、万が一、巣箱以外の想定外のところで出産した場合、子うさぎの眼が開いて、ちょこちょこと動くようになるまでは、動かさない方がよいでしょう。
巣を動かした場合、もうそこには子うさぎはいないと判断して、育児放棄につながる可能性もあります。
お母さんは出産に備えて毛をむしる
巣箱を設置してすぐに毛をむしるうさぎちゃんもいれば、出産直前に毛をむしるうさぎちゃんもいます。
交尾後29日目から33日に出産します。
時間的には早朝に出産する場合が多いですが、お昼にずれ込んだり、真夜中になることもあります。
出産時間は安産の場合はおおよそ1時間~3時間程度です。
赤ちゃんの数は1羽~6羽くらいまで
キャロットハウスで経験した赤ちゃんうさぎの数は1羽から6羽。
体重2㎏前後までのお母さんうさぎなら、おおよそこの範囲で収まります。
考えられる出産トラブル
〇死産
子宮から産道を通って出てくるときに、時間がかかりすぎると酸欠状態になり、亡くなった状態で出てくることもあります。また、大量に出血を伴う場合も赤ちゃんが窒息死してしまいます。
うさぎの出産の場合、死産になることがかなりあります。
開業時から統計を取っていますが、キャロットハウスではおおよそ赤ちゃんうさぎの4羽に1羽が死産です。
〇逆子
これも、割と起こりえる出産トラブルです。
通常赤ちゃんは頭から出てきますが、後ろ足から出てくる場合が逆子です。
その場合は、産道に頭が残っているため、呼吸ができずに生むまでに時間がかかると、酸欠状態になってしまいます。
〇母体の出血多量
スムーズに出産した場合、出血の量は出産後ポタっとポタっと落ちる程度で、出血量はそれほど多くありません。
しかし、血がおしっこのように多量に出ている場合や、出産後丸一日たっても止まらない場合は、かかりつけの獣医師さんに診察してもらってください。
〇子どもを食べる
「よく素手でさわると、人間のにおいがついてしまうので、生まれた子どもを食べてしまう」という話も聞きますが、キャロットハウスでは子どもを食べた事例は1例しかありませんでした。ですのでそれほど怖がらなくてもいいです。
この1例についてですが、お母さんが出産の心の準備ができておらず、生み落としてしまったと思われる事例でした。
その後そのお母さんは半日経って、順調にお腹にいた赤ちゃんを出産しました。
極端に神経質なお母さんうさぎでなければ、子どもを食べる心配はありませんが、心配な方はホームセンターで販売されている調理用ポリ手袋をつけてください。調理用ポリ手袋ですと、無臭なので安全です。
もうひとつ、子どもを食べていると勘違いするのが、出産の最後に赤い肉片である「胎盤」を食べるのを見たときです。
これは出産に伴う最後の大事な行動なので、温かく見守ってください。
〇奇形児
とくに、血統管理されたネザーランドドワーフだと、4分の1の確率で非常に小さい「ピーナッツ」と呼ばれる奇形児が誕生します。平均して生後20日くらいまでしか生きられません。
また生まれつき目が開いている赤ちゃんが誕生することもあります。
この子も長くは生きることが難しい赤ちゃんです。
また何らかの要素で、四肢が変形して生まれてくる赤ちゃんもあります。
出産後確認してほしいこと
無事に出産がおわってまず確認してほしいことは、「赤ちゃんが生きているか」ということです。
悲しいことにすでに死亡している場合は、取り除いてあげて、お庭や畑があれば土に返してあげてください。
土に返すところがない場合は、少し費用はかかりますが火葬してあげてください。
お住まいの自治体によれば、火葬場にペット用の火葬炉もあるところがあります。
また、お尻から絶えず水分が出ている赤ちゃんうさぎも注意が必要です。
多くの場合は、内臓に先天的な問題があって、消化吸収ができない赤ちゃんです。
出産翌日、赤ちゃんうさぎを見ることができれば、お腹に張りがあるか確認してください。
お腹が膨れていなかったり、ちょっと身体の表面がしわしわになっているなら母乳を飲んでいない可能性が大きいです。
強制的に母うさぎをだっこして、乳首のところに子うさぎをあてがって、強制的に飲ませることも検討してください。また、人工乳を与えることも検討してください。
うさぎの子育ては放任主義
「お母さんうさぎが育児放棄をしているみたいです!」とうろたえながらお電話される方も多くいらっしゃいます。
でも安心してください。
うさぎの子育ては、人間に比べてすごくあっさりしていて、1日2回・約5分ずつしかお母さんは赤ちゃんにミルクを飲ませません。それ以外ほとんどの時間は、子どもを巣箱に残したまま、巣箱の外でお母さんうさぎはすごします。
確認すべきことは、赤ちゃんうさぎのお腹が、ミルクを飲んだ後、きちんとふくらんでいるかどうかだけです。
出産を避けるべきうさぎちゃん
- 極端に小さいメスうさぎちゃん
- 生まれつき切歯の不正咬合があるうさぎちゃん
- まぶたの形状異常や先天性白内障、開帳脚など先天性の病気を持っているうさぎちゃん
- 鼻にかさぶたがあったり、陰部から黄色い膿状のものが出ているうさぎちゃん
(うさぎ梅毒にかかっている可能性があります)
なんらかの遺伝性の異常があるうさちゃんは、オスメスともに出産には向きません。
また、父母に異常がなくても、隔世遺伝として異常が出る場合もあります。
生後14日ほどで目が開く
生まれて2週間ほどは、産床で赤ちゃんはすごします。
生後14日ほどで赤ちゃんの目が開きます。
それから徐々に巣箱の外の世界にも興味を持ち始めます。
生後21日頃から、ペレットも食べはじめる
生後21日後くらいから、徐々に巣箱の中にある牧草やお母さんが食べているペレットもあわせて食べ始めます。
牧草やフードを食べ始めたから即離乳というわけではなく、並行して生後35日~42日くらいまで母乳も飲みます。
お母さんから離れて独立して生活できるようになるのは生後35日以降
親離れさせるのは、生後35日以降が望ましいです。
2羽以上子うさぎがいる場合は、お母さんから話して最初の1週間は子うさぎだけで生活します。
そのあと、1羽ずつの生活に移します。
生後2か月くらいから、自我が芽生えはじめ、2羽以上子うさぎがいると、順位づけを行うようになります。
いかがでしたでしょうか。
すこし文章が長くなりましたが、授かった命、大切に守っていきたいですね。
追記:Q&A
人工乳は何を与えたらいいですか?
ネット情報では「ヤギのミルクを与えたらいい」という情報も耳にしますが、当店ではヤギミルクを与えたことはありません。また、うさぎ以外の小動物にも使えるミルクも与えたことがありません。
当店では負傷した野うさぎベビーの生育に実績があった「ニチドウ・メディラビットIGPミルク」を薦めています。
当店でも販売はしているのですが、店頭販売のみしております。取り急ぎ欲しい方はAmazonや楽天で注文される方がいいです。
人工乳は1日何回与えたらいいですか?
母乳の場合は1日2回の授乳ですが、人工乳の場合は最低でも4~5回の授乳が必要です。